霊柩運送業の許可要件

霊柩運送業とは

霊柩運送業とは、「貨物自動車運送事業法」に基づいて、一般貨物自動車運送事業として国土交通大臣から許可を受けた事業者だけが行うことができるライセンス事業です。

つまり、白ナンバーの自家用車での遺体搬送は、道路運送法に規定された営業類似行為の禁止に抵触し、違法行為となります。

運送業許可の要件は5台以上の貨物車を準備しなければなりませんが、霊柩運送業は、個人・法人を問わず車両1台から申請することができます。

また登録車両が5台未満の場合は運行管理者及び整備管理者とも資格は必要ありません。

申請をしてから営業が開始出来るようになるまでには、3ヶ月~4ヶ月程かかりますので、その期間を見越して開業計画を立てる必要があります。

霊柩運送事業に必要な要件

霊柩運送業許可を取得するには、大きく分けて5つの重要な要件をクリアしなければなりません。

以下に1つずつ詳細にご説明いたします。

1.事務所・休憩仮眠室があること

霊柩運送事業の設備として、事務所・休憩仮眠室の設置が必ず必要になります。

しかし、どこでも、どんな建物でも良いという訳ではありません。

事務所・休憩仮眠室についての要件がありますので、以下に説明いたします。

都市計画法、農地法、建築基準法等の関係法令の遵守

実は、事務所として使用できる場所は制限されています。

特に都市計画法の規定に注意が必要です。

以下の区域では霊柩運送業の事務所として使用できませんので、賃貸借または売買契約前に十分に確認が必要です。

  • 市街化調整区域
  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域

※第二種中高層住居専用地域では、床面積の制限はありますが、2階以下に設置する場合は、使用可能です。

<Point!>

上記地域(市街化調整区域を除く)であっても、自宅住居と併設する場合は、条件付きですが認められます。

ご自宅に事務所・休憩仮眠室を設置する場合は、事務所と休憩仮眠室の床面積が50㎡以下でかつ延床面積の2分の1未満であれば設置することが認められています。

※但し、住民の合意による地区計画によって事務所使用が禁止されている場合もあるので、注意が必要です。

霊柩運送業の営業所としての使用権限があること

営業所としての使用権限を証明しなければなりません。

賃貸の場合は賃貸借契約書で証明します。

申請者所有の場合は土地建物の不動産登記事項証明書で証明します。

ただし、賃貸借の場合は注意が必要です。

自宅として借りている建物で、開業する場合、契約書の使用目的が「住居または住宅」となっているケースが多く、事務所と休憩仮眠室として使用しても良いという大家さんからの使用承諾書が別途必要になります。

また、契約期間も許可日より1年以上の期限があることが必要とされますので、期限が満たされない場合は、これも承諾書などで、別途準備が必要となります。

適切な規模の事務所であること

事務所の広さについては、明確な数値での規定はありません。

従業員(運行管理者、ドライバー等の人員)が支障なく使用できるスペースを確保できれば、問題ありません。

ワンルームマンションの1部屋でも可能ですし、個人宅の1部屋でも可能です。

霊柩運送の場合は、葬儀会社として運営するケースが多いですが、その事務室を兼用することも可能です。

休憩・睡眠できる設備の設置

従業員に休憩・睡眠を与える際に使用する設備は必ず必要となります。

乗務員に睡眠を与える必要がある場合には、少なくとも同時睡眠者1人当たり2.5㎡以上の広さが必要です。

なお、原則として、休憩・仮眠室は営業所または車庫に併設する必要があります。

※運営上、睡眠が必要無いのであれば、ソファー、テーブル等設置して休憩室のみとすることも可能です。

2.車庫があること

使用予定の車両台数分が置ける車庫が必要になります。

複数台使用予定の場合は、1台1台別々の場所に車庫を設置することも可能ですが、全ての車庫について、以下説明します要件を満たしている必要があります。

都市計画法、農地法、建築基準法等の関係法令の遵守

車庫については、営業所ほど規制は厳しくありませんが、土地の地目が「田」「畑」になっている場合は、使用できません。

不動産の取扱店へ確認するか、不動産の登記事項証明書を取寄せて確認して下さい。

車庫の前面道路幅の確認

車庫の前面道路(出入口が面している道路)の幅員については、「車両制限令」という法令に適合していることが要件となります。

まずは、車庫の出入口に面している公道について、幅員証明書を取寄せして下さい。

その際に、管轄の自治体へ使用予定の車両幅で、車両制限令に適合しているか確認して頂くと使用できる道路かどうか分かります。

車庫と営業所の距離の確認

原則として、車庫は営業所に併設ですが、営業所所在地から下表の距離以内に設置することでも問題ありません。

車庫と営業所の距離が10km以内の地域
滋賀県大津市、草津市
京都府京都市、宇治市、城陽市、日向市、長岡京市、八幡市、
乙訓郡、久瀬郡、綴喜郡の田辺町
大阪府5km以内地域を除く地域
兵庫県神戸市、姫路市、尼崎市、西宮市、芦屋市、伊丹市、
加古川市、宝塚市、高砂市、川西市、加古郡
奈良県奈良市、大和郡山市、天理市、橿原市、生駒市、
磯城郡の田原本町
和歌山県和歌山市、海南市
車庫と営業所の距離が5km以内の地域
滋賀県上記の10km以内の地域以外
京都府上記の10km以内の地域以外
大阪府貝塚市、泉佐野市、泉南市、豊能郡、泉南郡、
南河内郡の太子町、河南町、千早赤阪村
兵庫県上記の10km以内の地域以外
奈良県上記の10km以内の地域以外
和歌山県上記の10km以内の地域以外

車庫の面積の確認

車庫の面積は、実際に現地で寸法を計測し、平面図を作成します。

霊柩運送業の場合は、寝台車1台で運営というケースがほとんどだと思います。

そのため、月極車庫1台分または2台分を用意して申請することが可能です。

ただし、車両と車庫の境界及び車両相互間の間隔が50cm以上確保される広さが必要です。

3.運転者、運行管理者、整備管理者がいること

霊柩運送業も正式には、一般貨物自動車運送事業になりますので、運転者、運行管理者、整備管理者の配置が必要になります。

ただし、霊柩運送業については、運送区域(発地または着地)が営業所所在地の都道府県内に制限され、車両1台から輸送可能とされています。

運行管理者の設置

常勤の運行管理者1名を確保しなければなりません。ドライバーと兼務することはできませんのでご注意下さい。

なお、車両4台までなら運行管理者の資格は必要ありません。

整備管理者の設置

常勤の整備管理者を確保しなければなりません。ドライバーとは兼務可能です。

車両4台までなら整備管理者の資格は必要ありません。

運転者の配置

車両台数分の常時選任運転者を確保しなければなりません。短期雇用(2か月以内)や日雇労働者等は員数に入りませんのでご注意ください。

社会保険の加入

法人の場合は、ドライバー、整備管理者、運行管理者の社会保険への加入が必要となります。

許可後に事業用ナンバーを取得する際に、加入証明を提出する必要があるので、その時までに加入しておきます。

※個人事業者で従業者が同居の親族の場合は、加入義務はありません。

4.自己資金があること

計画資金の全額を保有していること

霊柩運送事業許可を受けるためには、申請から許可取得までの間、計画資金の全額を継続して保有していなければなりません。

資金計画は6か月分の人件費・燃料費・修繕費等、1年分の車両費、施設費等、1年分の保険料等の金額を合計して算出します。

例えば、法人で役員1名、ドライバー1名および運行管理者(役員と兼務)1名、車両1台で開業予定の場合、営業所、車庫の賃料と車両代及び任意保険料を除いて、平均で350万円程度で計上されます。

これに1年分の営業所・車庫賃料、車両代及び任意保険料を足した金額が計画資金になります。

この合計した金額よりも自己資金(残高証明書)が上回っていなければなりません。

※申請日及び運輸局が決めた任意の日付けで残高証明書の提出を求められますので、途中で減額することのないように注意が必要です。

※車両費については、ローン又はリースの場合は、1年間の費用計算となりますが、一括購入の場合は、諸費用込みの総額を計画資金に入れなければなりません。

5.法令試験に合格すること

法令試験の範囲

霊柩運送業の許可申請を行った月の翌奇数月に法令試験がおこなわれます。

受験資格は、申請者(法人の場合は、運送事業を運営する常勤の役員1名)のみとなっています。

出題される試験範囲は以下の13項目です。

① 貨物自動車運送事業法

② 貨物自動車運送事業法施行規則

③ 貨物自動車運送事業輸送安全規則

④ 貨物自動車運送事業報告規則

⑤ 自動車事故報告規則

⑥ 道路運送法

⑦ 道路運送車両法

⑧ 道路交通法

⑨ 労働基準法

⑩ 自動車運転者の労働時間等の改善のための基準

⑪ 労働安全衛生法

⑫ 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律

⑬ 下請代金支払遅延等防止方

法令試験の実施方法

この試験は、奇数月にしか実施されません。

例えば、9月に許可申請をおこなった場合、翌翌月の11月に行われる法令試験を受験することとなります。

50分間の試験時間で30問の問題が出題され、そのうち8割(24問)以上の正解で合格となります。

合格となった場合は、申請内容の審査が開始され、補正等が解消されれば無事に許可交付となります。

もしも、不合格だった場合は、再度、次の奇数月に法令試験を受験することとなります。

運悪く、2回目の試験も不合格だった場合は、一旦申請を取り下げなければなりません。

そして、また再申請をおこない、法令試験を受験するということになります。

つまり、法令試験が不合格となった場合は、許可交付が単純に2か月延びてしまうこととなります。

霊柩運送事業のその他要件

車両(寝台車、霊柩車)について

営業所毎に配置する事業用自動車の数は、1両以上あれば申請可能です。

車両は大きさ、構造が遺体を輸送するのに適切なものが必要です。

霊柩車両の種類は、宮型、洋型、バン型、バス型があります。

軽自動車は別の事業となりますので、不可となります。

その他、使用する自動車の使用権限を証明しなければなりません。

購入の場合は譲渡証等、リースの場合は契約書等、所有の場合は車検証コピーで証明します。

※申請に際して、車両を購入しておく必要はありませんが、申請後、許可交付までに購入しないと許可証の交付がされませんので、ご注意下さい。

許可取得が出来ない欠格事由

この運送業許可は要件等整えれば、誰でも例外なく与えられるという訳ではありません。

法律上一定の範囲に該当する人(法人)は、いくら要件を整えても許可を取得することは出来ないようになっています。

これが欠格事由になります。

以下に記載している内容に該当する場合は、許可取得が出来ませんので、事前に確認しておいて下さい。

<貨物自動車運送事業法 第5条>

  • 1年以上の懲役または禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
  • 一般貨物自動車運送事業または特定貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から2年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しに係る聴聞の通知が到達した日前60日以内にその法人の役員であった者で当該取消しの日から2年を経過しないものを含む。)
  • 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者または成年被後見人であって、その法定代理人が上記のいずれかに該当する者
  • 法人であって、その役員のうちに上記のいずれかに該当する者のあるもの

※既に許可を受けている場合で、本人(法人の場合は法人の役員)が上記に該当した場合は、許可の取消処分となります。

※役員とは、登記上役員(取締役、監査役)になっている者だけでなく、役員と同等以上の職権又は支配力を有する者も含みます。

〔損害賠償能力〕

計画車両すべてについて自動車損害賠償責任保険又は自動車損害賠償責任共済に加入する計画のほか、任意保険の締結等十分な損害賠償能力を有するものであること。

※任意保険加入の取扱いでは、以前は被害者1名につき5000万円以上の保障額が要件でしたが、現在の補償額は無制限となりました。

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